「びょういんあーとぷろじぇくと」は、病院にアートがあることで、病院にかかわる多くのかたに、安らぎや心のゆとりを持って過ごしていただきたいと願い行ってきた活動です。
2008年に札幌ライラック病院を舞台に始めた「びょういんあーとぷろじぇくと」の開催は、2015年度で8年目を迎えることができました。本企画、第9回展『まどの向こうに』は、道内外でご活躍されている女流画家、前川アキ、山田恭代美の‘まど’をモチーフとした作品を待合室に飾らせていただいています。
「あなたの窓から、暖かく柔らかな光、緑の薫りの優しい風、逢いたかった優しい声…一日一日を乗り越えるにつれ、素敵なことが、たくさん訪れますように… 」(前川アキ)
「私が創ったいくつかの絵が、まどの向こうにみえる景色のように、あなたの今日の気分に寄り添うことができますように…」(山田恭代美)
お二人のメッセージとアートから‘自然’の持つ力強さや生きる力、大きくあたたかく包みこんでくれる包容力を感じていただければ幸いです。
また、障がい者支援施設北の峯学園の皆さんの作品を、玄関ホールに展示させていただけたことに感謝いたします。制作のなかで表現される作り手のこころは、喜びでいっぱいです。
医療の現場でアートに触れ、これからも皆さんと一緒に‘病院にアートがある意味’についてを、考えさせていただけますようお願いいたします。
びょういんあーとぷろじぇくとスタッフ一同
文:おだこうじ(緩和ケア医/一級建築士)
病院の非日常性の克服、閉塞感からの解放ー
「びょういんあーとぷろじぇくと」の効用のひとつをこう考えるならば、今回のテーマ「まど」には合理性があります。
「まど」の外には季節の移ろいがあります。社会の動きがあります。あるいは自由と可能性があります。だから病院に「まど」を穿つことで、患者・家族の人生時計の針の遅れを、少し取り戻すことができるのかもしれません。
けれども、「まど」の外は決して晴れてばかりいるわけではありません。嵐の日に、せっかく咲いた花々が散りゆくのを見るかもしれません。ひっきりなしの車の往来に、巷の喧騒を思い出してしまうかもしれません。病院がシェルターであったことに改めて気づくのもまた「まど」の機能でしょうか。
希望を託すのも「まど」、恨めしく眺めるのも「まど」。心踊らされ惑わされ、診療の合間の彩りに変化が見られれば、それこそプロジェクト冥利と言えるでしょう。
今回の「まど」はどれも色鮮やかです。楽しい色でしたか、悲しい色でしたか。
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