病の治療には身体の「外」からの治療に加え「内」すなわち心の状態を整える治療とがありますが、薬を用いた治療が一般的になっている昨今では、本来人間に備わっている自然治癒力を高めて身体を癒やす、ということは忘れられがちです。健康な心身の状態では鎮痛物質が分泌し幸福感が増すとも云われていますし、免疫力の向上・低下は患者さんを取り巻く環境に左右されることは既に明らかになっています。
芸術=アートは少なからずも健康に良い影響を及ぼし、様々な問題の解決に繋がる役割になると考えます。ホスピタルアートは単なる病院・施設のインテリアではなく、その病院のあるべき方向性を含めた患者さんへのケアとなるべく、様々なコーディネートが重要なポイントになるのではないでしょうか。
『びょういんあーとぷろじぇくと』は、作家の方々とこの問題に取り組み続けています。患者さんの心に寄り添い、そして、この取り組みに賛同し参加・活動している作家の方々の祈りが届きますよう願ってやみません。
文 ギャラリーミヤシタ
宮下 明美 氏
「びょういんあーとぷろじぇくと」では、2019年夏から2021年冬までの約3年をかけて、医療の場を、こころの通った温もりの感じられる人間らしい空間に近づけようと、美術家17名による5回の展覧会とイベントを継続開催中です。2回目となるVol.2は、テーマを「陽だまり」として展示しています。
病と向き合い治療している人は、戸惑ったり、不安になったり、今までどおりの日常が送れずに、辛い気持ちを抱えたまま日々頑張っています。そして、その人たちをそっと見守り支える家族や友人たち、医療スタッフも一緒に頑張って疲れを感じているのではないかと思います。
ナイチンゲールはその著書「看護覚え書き」(1860年)の中で、「いつも同じ天井や壁を見ているような患者たちに色鮮やかな花一束を見せた時の患者たちの狂喜した様子を私は一生忘れない」と患者の色彩や変化への渇望について述べ、病院の療養環境において美しい色彩による変化が必要であることを論じています。
作家たちの優しい思いのこもった作品は、陽だまりのように命と向き合い日々頑張っている人たちの心にそっとふれて働きかけ、心を動かし、優しく包んで癒してくれることでしょう。病院にいる、病院を訪れるすべての人たちにとって、心動かされる、日常を取り戻す一部になりますように願いを込めて。
札幌市立大学看護学部助手
北海道大学公共政策大学院客員研究員
看護師 中田 亜由美
上嶋秀俊
野村裕之
山田恭代美
札幌ライラック病院1階「待合室と通路」
2020年1月13日(月・祝)〜6月7日(日)
12:00〜18:00