人は誰もが鋭敏な「感受する主体」ですが、ただ「治療される身体」としてのみ扱われるとき、言いようのない息苦しさを感じます。
治療機能に特化しがちな病院の空間ですが、そこは同時に患者や医療スタッフ達の日々の生活の場でもあるのです。こうした空間課題を背景に、最近になって日本でも、 医療の現場に芸術を取り入れ、 患者の癒やしや治療に生かす取り組みが広がり始めました。
北海道では、2008年から札幌ライラック病院で「 びょういんあーとぷろじぇくと」の活動が始まりました。代表の日野間尋子のコーディネートで、アート作品の設置のほか、コンサート、レクチャー、ダンスなど、毎年のように分野と手法を更新しながら、病院をコミュニティーのひとつとして捉え、アートの力で働きかける取り組みが継続されています。
空間にアートがあることで、「気持ちが明るくなった」、「病院の中での会話が増えた」といった声も寄せられるようになりました。
最近では、札幌ライラック病院以外にも活動の場が拡がり、2015年には北海道がんセンターでも展示=写真左=や合唱を行いました。そして2016年、第11回目となる本展では、札幌の天使病院、市立札幌病院が新たに会場に参加しています。
壁や天井に配されたカラフルでユーモラスなアートの数々は、病院の人々を「感受する主体」として呼び覚まし、改めて、自分自身や世界と出会わせてくれているかのようです。そして、この場所は「人間の空間」であることを静かに宣言してくれています。
文:北海道大学大学院国際広報メディア観光学院 加藤康子
札幌ライラック病院1階「待合室と通路」
2016年9月5日〜12月27日(12:00〜18:00)
天使病院「天使ギャラリー」
2016年10月2日〜12月3日(7:00〜18:00)
市立札幌病院3階「ジェントル・ストリート」
2016年9月12日〜11月13日(9:00〜17:00)
文:おだこうじ(緩和ケア医/一級建築士)
文:医療法人北志会 札幌ライラック病院理事長 志田 勇人
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