UNDER THE WING OF THE TIME SOTTO LE ALI DEL TEMPO SOUS LES AILES DU TEMPS UNTER DEN FLUEGEN DER ZEIT 時の羽の下で
カメリア・ポパ・カラカネアヌ CAMELIA POPA CARACALEANU

▼カメリア・ポパ・カラカネアヌ Camelia Popa Caracaleanu  詩人・画家。ルーマニア作家連盟会員。  文学博士(ブカレスト大学)。  2004年、ルーマニア大統領より「教育者功労賞」受賞。  2005年、ルーマニア教育省より「優秀賞」受賞。 〜序文〜  カメリア・ポパ・カラカレアヌはルーマニアの芸術分野におい て様々な努力を重ねた人物であり、我々に素晴らしい文学作品と 出会う機会を与えてくれる。  その類まれなる感受性から生まれる言葉たちは、純粋さを失わ ず、暗示的で濃密である。深く哲学的なこれらの詩は、世界と時 代を反映し、洗練された感覚を証明する。詩を創作する過程での 作者自身へのフィードバックが、詩を通してヴァイオリンのよう にその心の震えを表現している。 この繊細さは彼女の油絵にも見ることができ、その風景画の多く がアマチュア絵画展に出品され、高い評価を得ている。  彼女の作品は、その強い感受性の成熟した果実を表し、その才 能を立証するものである。 ルーマニアアカデミー会員 ガブリエル・ツィペレア  詩人カメリア・ポパ・カラカレアヌの書く詩は、精巧でずば抜 けた繊細さを持っている。深く叙情的なこれらの詩は、彼女独特 のメタファーによるものである。                            詩人                   コンスタンツァ・ブゼア  今まで出版したすべての本において、カメリア・ポパ・カラカ レアヌの詩は優しさと繊細さに満ちている。その多様なメタファ ーは、詩人としての類まれなる才能を感じさせる。                            詩人               ヴィクトリア・アナ・タウシャン  これらの詩は、私たちの感情の中に滑らかに且つ音楽的に入り 込んでくる。使われている言葉たちはシンプルでありつつも期待 感と焦燥感、あるいは時の流れを的確に表現している。                            詩人                     フロリン・ブルタン
壊れた涙腺 時が泣き 涙が伝う 心に咲いた 花の茎 杏の花びら 敷居の前に降り積もる 炎の滝壺のごとく 運命の呼びかけ 時の導線を揺さぶる その根元から 太陽の糸で纏った 心の柱時計 夕日の耳にも響くだろう 刹那の手のひら 夕日の頬に 紅を焼きつける 真夜中の目 悲しみで腫れ上がり 夢の噴水に浸る 秋の唇 真昼の蜜をすする 穏やかな午後の杯から 感情は石となり 森の身体から 希望の生命を絶つ 時代の復讐 大地を覆し 世界を埋める 煙は 蛇のように立ち昇り 真夜中の空気を覆う 瞼の隅で 震えを断ち切る 欄の神秘 空を飲み込みたい 海は伸ばし続ける 朝露にぬれたその両腕を 夏の木漏れ日 歌いながら溶けていく 光の果実のように 正午 ヴァイオリンのうたたね 詩を生み出す 思い出の松明 水のような清さで 魂の表面を焦がす 消えない蝋燭 その身を溶かし 聖なる空気 月の洗礼 光が遊ぶ 大地の息遣いが 春を生む 透きとおった トンボの羽 蓮の純白に触れる 神の吐息か 心を酔わす 百合の花 疲れ果てた 光のくるぶし 暗闇が泣いている 思い出の終点で 眩しい春が笑う 取り残された航海士たち 果てしない時の海 神の灯台を探そう 燃え上がる 朝の滝 眼差しの雨が降る 忘却の静けさ 星の真ん中から 輝く液体が流れ落ちる 運命の稲妻 盲目に突き抜ける 夢の大地を 歳月の唇に触れるとき 高慢は無邪気な笑顔を 凍りつかせる 愛の太陽たち 距離をつなぐ 光の橋を架けて 早朝の美しさ 星へと続くその道から 鳥達の歌が降りてくる 雨は日々の涙 刈り取られた太陽の平原を洗う 青く光り 手を取り合う 雪のダンス 夢を灯す ひざまずいた真夜中の時計 思考の入り口を閉める 思い出の塵が広がり 見ることができない ひばり達の旅立ちを 捕らわれ もがくもの 8月の静けさの中 言葉の蜃気楼を吹き散らす ゆらゆら進む 時の帆船 今日という日を苦しめながら 蝶の滝 愛しさが植えつけられた 平原に染み渡る 歌の芽を 十字路で生み出す 森のフルート 人の世界に住む天使 八つ裂きにされた羽 毒にぬられた棘の中 時の花びら 光を揺らす 一番星の向こうまで 太陽がかたむく 黄昏の時計が 両腕を差し出す 灰色の頂 捧げる贈り物は 縁に咲くその花 炎の願い 神の抱擁によって 再び生まれる 木々のねじれ 天の松明から ろうが滴る 呪いのような寒さ 蝶の雲が 雪を降らす ひとりぼっちの木 あなたの為に夢を見る 光る樹液が届くよう ほどけた雪片 朝に着せる 暖かい光の果肉 空想の祭壇 天使が赤子を寝かしつける 桜の微笑で包み込んで 恋人たちの呼びかけ 遠い2人の肩に 雪の花びらが散る 空気は驚き震え ろうそくの炎の中で 蝶の鱗粉を押しつぶす ちぎれた一日 雨のすすり泣き 大地の洗礼 刹那を脱ぎ捨てる 愛の渦の中を 泳ぎながら 病める日曜日 秋の血が その傷に滲み出る 運命の手 眠れない子供たちの 頭を撫でる 虹の下 時が止まった庭園 花々から光が溢れる 解き放たれた 夕暮れの馬 星の芝生を駆けてゆく 愛のそよ風 時の縁で 呪いの羽を折る 思い出の果実 運命の入り口をたたく 過ぎ行く年月の中で
表紙絵:ソリン・ガブリエル・カラカレアヌ 翻 訳:クリスチャン・ミハイ・カラカレアヌ     ソリン・ガブリエル・カラカレアヌ 日野間 佳子            2人の息子、クリスティアンとソリンへ                  はかり知れない愛を込めて Camelia Popa Caracaleanu, Cristian Mihai Caracaleanu, Sorin Gabriel Caracaleanu, and Yoshiko Hinoma 2005 ALL Rights Reserved. 平成17年12月15日発行 著者:カメリア・ポパ・カラカレアヌ 発行:有限会社イー・アイ・エル 印刷:有限会社オンリーワン Printed and Published in Sapporo, Japan

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